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2種類のスポーツ貧血|鉄欠乏性貧血・溶血性貧血の原因と予防法

2018年12月29日

アスリートは、意外に貧血になりやすいものです。

「スポーツ貧血」と呼ばれるアレです。

激しい運動を習慣にしている人は、鉄の欠乏と赤血球の破壊。ふたつの要因から貧血になりやすいのです。

貧血の自覚症状

貧血は心拍数をあげる

なかなか気づきにくいのが貧血ですが、多い訴えに、疲れやすさ、だるさ、息切れ、動悸などがあります。

外見上の変化として、顔色が悪くなる爪の色が白っぽくなる、爪が反り返るといったものがあり、下瞼の血色は、医師の診察でも見られるポイントです。

下瞼の色は、時々チェックする習慣をつけましょう。

お子さんのいる方は、お子さんの下瞼も。

異味症という、氷がかじりたくなる症状が有名ですが、すべての人に起きる症状ではありません。氷を食べたくないから貧血ではないということではありませんのでご注意を。

めまいや立ちくらみは、貧血の症状と思われがちですが、血圧や自律神経の異常が原因になって起きるものです。

鉄欠乏性貧血

鉄のフライパンでスポーツ貧血予防

アスリートが鉄欠乏性貧血になりやすい理由

女の人に多い鉄欠乏性貧血ですが、男性アスリートも陥る危険があります。

鉄は、尿や汗に少しずつ含まれ、1日に1mg前後が失われています。

女性の生理中は、これに加えて1日に平均0.5mg程度を喪失します。

加えてアスリートには、さらに鉄を失う理由があります。

発汗

汗にも鉄が含まれているので、汗と一緒に鉄が体外へ出てしまいます。

汗は、鉄の他にも多種類のミネラルを含んでいますが、汗腺から皮膚表面に届くまでの間に、ミネラル分は再吸収されています。

少しの汗であれば、それほど心配する必要はありません。

でも、急激な汗や大量の発汗では、再吸収が追い付かず、鉄などの微量元素は汗と一緒に流れ出してしまいます。

夏場の野外での運動などでは、急激で大量の発汗が避けられず、日々少しずつ体内の鉄を減らしている可能性があります。

筋肉に鉄を取られる

屋内での筋トレにも鉄欠乏の危険があります。

鉄は筋肉内にも存在するもので、トレーニングによってバルクアップした筋肉は、その分多くの鉄を内在することになります。

鉄は体内にあるのですが、血中の鉄は低下するので、鉄欠乏貧血の症状が出ることがあります。

鉄欠乏性貧血の検査・診断

貧血検査の数値の見方

Hb(ヘモグロビン)Ht(ヘマトクリット)低値

Ht(ヘマトクリット)は、血中の血球の割合を示す数値です。
赤血球の割合とほぼ等しく、ヘマトクリットが低いということは、血の中の赤血球割合が低いということです。

MCV(平均赤血球容積)低値

MCVは、赤血球の平均容積量を示す数値です。
MCVが低い=赤血球が小さいということです。

MCH(平均赤血球色素量)低値

赤血球1個に含まれるヘモグロビン量です。
MCHが低いのは、ヘモグロビンが少ないことを意味します。

Fe(血清鉄)低値

血清鉄は、ヘモグロビンの構成因子のひとつです。
血清鉄が低いときは、血清の中の鉄が少なくなっているときです。

フェリチン(貯蔵鉄)低値

体内の鉄(2~5gくらいです)のうち、60~70%は、ヘモグロビン内にあり、一部は筋組織内などに存在します。
残りの20~30%が貯蔵鉄と呼ばれるもので、肝臓、脾臓、骨髄に貯められいて、ヘモグロビンが不足したときには、この貯蔵鉄が使われることになります。

HbやHtは正常であってもフェリチンが低い状態は、かくれ貧血とも言われます。

健康診断などではフェリチンまでは検査されていないことも多いので、貧血を示す検査値は出ていないけれども、だるさや息切れが続く場合は、フェリチンを調べてもらってみてください。

参考:日本人間ドック学会「血液検査」

鉄欠乏性貧血の治療

南部鉄器で貧血予防

鉄の補充です。

鉄欠乏性貧血かどうかは、自己判断せず、医師の診断を仰いで下さい。

摂取するべき鉄の量も医師が決めてくれます。

鉄欠乏性貧血の予防

スポーツ貧血を予防するのに推奨される鉄の一日摂取量は、生理のある女性で10.5~13mgと言われています。

食事から多く摂るよう心掛け、足りないときにはサプリメントを使うのもいいのですが、過剰にならないよう注意してください。

鉄を摂取するときの注意

鉄の過剰摂取

過剰摂取は、肝機能障害、肝硬変、糖尿病などの原因になります。

また、鉄を摂りすぎると亜鉛の吸収が落ちてしまいます。

食事から摂る分にはそれほど心配はいらないと思いますが、サプリメントなどでは飲みすぎに注意して下さい。

また、お子さんの貧血を疑ったときは、必ず医師に相談してください。別の病気の可能性もないわけではないです。

溶血性貧血(微小血管障害性溶血性貧血)

底の柔らかい靴でスポーツ貧血予防

重篤な貧血につながりやすいのは、圧倒的に鉄欠乏性貧血なのですが、もうひとつ、微小血管障害性溶血性貧血というのがあり、こちらのほうが、スポーツ貧血として知られているように思います。

長距離ランナーの方には、必ず知っておいて欲しい貧血です。

溶血性貧血には疾患や細菌によるものもあります。ここで話すのは物理的刺激による溶血性貧血のことです。

「溶血」とは怖い字面ですが、赤血球が破壊されることです。

身体がどこかに強く当たると衝撃部位の赤血球が壊れていまいます。

ランニングでは、着地の衝撃を何度となく受ける足裏で赤血球が壊れます。

他の競技でも、素足で行う剣道や手足に衝撃を受けるバレーボールなど、物理的な衝撃を受ける種目のすべてで起こりえます。

通常であれば、赤血球の寿命は120日前後で、老化した赤血球は、脾臓、肝臓、骨髄などに取り込まれて分解され、鉄は体内で再利用されます。

同時に脊髄で毎日新しい赤血球が造られているので、赤血球数は一定に保たれるのですが、衝撃によって破壊される赤血球の量までは補えないので、激しい運動を続けると赤血球の不足が起こります。

赤血球の99%は、ヘモグロビンです。

そしてヘモグロビンは鉄とタンパク質でできています。

赤血球が破壊されると、ヘモグロビンは単独で血中を泳ぎ、腎臓に回収されます。

回収されたヘモグロビンに含まれる鉄は再利用されますが、大量の赤血球が破壊された場合には回収しきれず、腎臓の手に余るヘモグロビンは、鉄もろとも尿と一緒に排泄されます。

これが、アスリートが貧血になりやすい二つ目の理由です。

溶血性貧血の検査・診断

EPAで赤血球に弾力を

破砕赤血球の所見

衝撃による溶血性貧血を起こした血液には、三角形やヘルメット型をした赤血球断片(破砕赤血球)が見られます。

MCV低値

MCVは、赤血球の平均容積量を示す数値です。赤血球の大きさということです。
この値(赤血球のサイズ)が小さくなります。

RDW-SD高値

RDW-SD=赤血球分布幅です。
赤血球の大きさが揃っているか、バラツキがあるかを調べています。
この値が大きいということは、赤血球のサイズにバラツキがあるということになります。

Fe(血清鉄)高値

鉄欠乏性貧血では低い値を出す血清鉄は、溶血性貧血では高値になります。
赤血球が壊れて居場所をなくした鉄が血清中に多く存在している状態です。

参考:メルクマニュアル「物理的損傷による溶血性貧血」

治療法

※衝撃に起因する溶血性貧血の治療の話です。

衝撃を取り除くことが望まれます。

スポーツによる溶血性貧血は、それほど重大な症状に進むことは稀であるとされていますが、鉄の欠乏まで進行している場合には、鉄欠乏性貧血と同じ治療、鉄の補充療法になるでしょう。

溶血性貧血の予防法

土のランニングコースでスポーツ貧血予防

衝撃を和らげる工夫を

底の柔らかいシューズを選ぶといいと言われますが、靴の好みは人それぞれで、なかなか…。

ランニングコースを土に出来ればトレーニングの効率も上がって理想的です。

コースも、それぞれ事情があって思うように行かないことが多いと思いますが、長い距離を走る方は、土のコースに出来ないかご一考を。

鉄の補充

これは、鉄欠乏性貧血と同じです。

注意点も同じなので、くれぐれも過剰摂取には気を付けて下さい。

EPAの摂取

オメガ3のひとつであるEPA(エイコサペンタエン酸)には、赤血球の弾力性をアップさせる効果があります。

弾力性の高い赤血球は、衝撃を受けても壊れにくいので、スポーツ貧血の予防につながります。

EPAについてはこちらに